miracle☆orion

好きなものを好きだと言いたい。

🤡🎈のオタクによるカタシロReflectネタバレ感想

ミコトシロの告知と「推しのカタシロを初見にしてほしい」という健屋さんのポストを見て、力一シロを初めて観ました。
以下、「力一シロ」「ミコトシロ」「ユメオシロ」「グウェルシロ」のネタバレ感想です。

アフタートークを観ていないので、的外れなこと言ってるかも……と思いつつ、まずは自分の感想をそのまま記しておきます。
 
 
 
 


目の前の女の子が笑ってくれるのなら、苦しみながらも自分の身体を差し出してしまえる力一さんに情緒がやられたのですが、譲りたくない気持ちが前提としてある「ミコトシロ」「ユメオシロ」の攻防戦を観ることで、力一さんの無抵抗具合が際立ったのが面白かったです。
グウェルさんは更に無抵抗なんですけど、彼は手放すことへの執着が本当に無さそうに見えたので、力一さんとはまた立ち位置が異なるんですよね。
(「あなたもお子さんの成長を見たいでしょうから……」と医師から言われてもグウェルさんの気持ちが揺るがなかったのは、どういう思考からなんだろうというのは気になるところですが……アユムが「いつか返す」と言っているので将来的には返ってくることにはなりそうだけど、それをグウェルさんが期待しているようにも思えないんだよな……

「自分がしたことが無駄にならないように黙秘する」「自分は自分だと思わないとやってられない」辺りの言葉に、今後力一さんを待ち受ける苦しみが暗示されていますよね。
アユムに幸せな人生を送らせると決めた力一さんは、近いうちに平然とした顔で二人の前に現れそう。
三人で会うときはみんな幸せそうに振る舞うけれど、力一さんは人知れず物凄く苦しみ続けるし、医者は罪悪感に苛まれ続けるし、アユムも成長して恋をしたときにめちゃくちゃ苦しむだろうし……それこそ将来的にアユムが力一さんに恋してしまう可能性もある訳で……大変人間臭い地獄が見られそうですね……。

今回見た医者の中で、オリバー医師が一番罪悪感と人間味がありそうというか、患者が拒否すれば本当に身体を元に戻してくれそうな気配がしました。
健屋さんも引き下がってくれそうではあるけれど、グウェルさんがあまりにもあっさり引き受けてくれたからというのもあると思うので……拒まれたら豹変する可能性もあるのでは……と思いました。
そもそも医者が父親なのか母親なのかで結構意味合いが違うんじゃないかなとも思うので。
どちらにしても狂気ではあるのだけれど、母親の方が狂気度は上がりそうで……。
他の健屋さん医者回も気になるところです。

叶医師に関しては、最初から相手の同意をとるつもりが無さそうなので、拒んだところで絶対元に戻してないだろうなぁと思いました。
そのことは夢追さんも分かっていそう。
それでも自分の身体は自分のものであるという表明をした上で、たとえ自分の身体が機械になっていたとしても、「夢追翔を夢追翔であると思ってくれている人たちがいること」を己の存在証明として生きていくんだろうな……。
メンテナンスで呼び出されても、医者に憎悪を向けることはなく「ずるいですよね」「ごめんねー」というあの調子で会話する図が浮かびます。
でもアユムとの対面はしなさそう。

力一医師は絶対に引き下がらないという意思が誰よりも強くて、「大切な人を助けるためには、身近な誰かが悪になるだろう」という回答を体現していましたね。
患者の力一さんに対しては「もっとエゴイスティックに生きてくれよ……自分の幸せを大事にしてくれよ……」と思ったので、エゴの塊と化した医者が見られて大変良かったです。
力一医師があんなにも強固に身体を得ることに拘るのも、正解がないクイズに対して答えを出した結果なんだろうな。
やっと導き出した唯一の答えに縋ることしか出来ない……。
力一医師は患者に合わせて会話してくれているけれど、本心では「どうせ妄想だろう」と思っていることが透けて見える気がします。
それでいて同意を取るためになら、臣下のように振る舞ったりしてみせることも厭わない。
普通の親なら「子を鬼にしてしまうかもしれない」というところで躊躇するはずなのに、それを全く意に介してないのは、妄想だと思っているからなのか狂気故なのか……。
でも絶対に同意は取らないと気が済まない辺り信用には値するので、尊さんとの約束は守ってくれそう。
とはいえ、アユムが尊さんの身体を借りている状態のときに医者が死んでしまい、もう戻れない……という地獄エンドしか浮かばないんですけどね~~~~~!

初見の衝撃は初見でしか味わえないけれど、色んな方の舞台を見る度に味わいが変わってくるのがとても面白いので、他の回ももっと観てみたいと思います。
素敵な企画をありがとうございました。
 
(追記)
健屋さんのネタバレ感想配信を観て、力一医師のメイクの理由がちゃんとあったことに驚きました……。
火傷はアユムと同じ事故で負ったものなのでしょうか……自分だけ助かってしまったということ……?
あの日から事故の跡と笑えやしない口角を隠し、正解を探し続けてきたのだと思うと……アユムちゃんだけでなく、奥さんのことも深く愛しているのだと思えてきますね……。
愛する妻が残してくれた我が子だから、アユムを蘇らせるのは妻の希望でもある筈だという……。
奥さんもアユムもそんなことは望んでいないのに、独り善がりな正解に拘り続ける……そんなの本当にピエロじゃないですか…………。

すけべ怪談2025 12本目 貝×××

力一様、皆様。
貝合わせをご存知でしょうか?

存じ上げない方のために説明しますと、はまぐりの貝殻を左右に分け、ぴったりと重なるものを探し出す遊びのことです。
一対のはまぐりの貝殻は、決して他の貝殻と合うことはないのだそうです。
何だかロマンチックですよね。
実際、夫婦が添え遂げることを願う縁起物として、結婚式で使われることもあるそうです。
わたしがその存在を知ったのは、博物館の展示でした。
江戸時代の調度品が展示されている中に、一際目を引く色とりどりの貝殻が並んでいたのです。
その美しさと、かつては平安時代の貴族も遊んでいたという優雅さから、わたしもいつか実物に触れてみたいと憧れるようになりました。

その願いは、思わぬ形で叶うこととなりました。
亡くなった祖母の遺品整理をしていた時、見覚えのある古びた木箱が目に留まったのです。
生前の祖母は、それをとても大事にしていて、「これは扱い方を間違えると、お化けが出るのよ」と言い、誰にも触らせようとしませんでした。
優しい祖母らしからぬ嘘までついて、一体何を守りたかったのか……無性に知りたくなったわたしは、家族の目を盗み、その箱を開けてみました。
中から出てきたのは、夢にまで見た美しい貝殻たち。
貝殻の内側には金箔が貼られ、様々な植物の絵が描かれていました。
確かに祖母とは趣味が合うことが多かったのですが、まさかこんなに素晴らしいものを所有していたなんて。
わたしは興奮しながら、古びた貝殻を丁寧にテーブルの上に並べました。
一枚手にとり、隣の貝殻にそっと重ねる。
カチャ……と貝同士が擦れる音がしますが、その2枚の間には、微かな隙間があります。
カチャ……カチャカチャ……何枚か合わせていくうちに、ぴったりと重なり合う相手を見つけることが出来ました。
その瞬間、わたしは奇妙な高揚感を覚え、少しの隙間もなく密着した一組の貝を、うっとりと眺めていました。
そうして暫しの間、無言でカチャカチャと貝殻を重ね、その遊びに没頭したのでした。

母に声をかけられ、我に返ると、すっかり日が暮れていました。
貝殻を組み合わせるだけの単純な行為に、良い大人が何故こんなにも熱中していたのでしょう。
不思議に思いながら、貝殻を箱に戻し、わたしはリビングに向かいました。

深夜のことです。
ふと目を覚ますと、足元の方から、カチャ……カチャ……と硬いものが擦れ合うような音が聞こえてきます。
カチャ……カチャ……
それは先ほどわたしが興じていた、貝合わせの音に似ています。
しかしわたしは、この部屋に貝殻を持ち込んでいません。
いやそもそも、たとえあの貝がこの部屋にあったとしても、勝手に音が鳴る筈がないのです。
誰かが貝を手にし、重ね合わせようとしないことには。
そう、誰かが……わたしの足元に、居るのです。
それに気づいた瞬間、反射的にわたしは足元に視線を向けていました。
そして見てしまったのです。
床に垂れた、長い黒髪を。

途端に悲鳴を上げそうになりましたが、あまりの恐怖でそれすらままなりません。
カタカタと震える指で必死にシーツを掴むと、不意に音がやみました。
「……ない」
貝の音の代わりに聞こえてきたのは、女性の声でした。
とてもか細く、今にも泣き出しそうな声。
「ない……ない……どこなの……どこ……」
その声には悲しみだけでなく、憔悴と微かな怒りが滲んでいました。
ゆらり、影がうごめく気配。
「どこ……どこなの……どこに行ったの……」
声が近づくにつれ、冷たい風に身体を撫でられる心地がします。
まばたきを忘れたわたしの目に、その声の主の姿がはっきりと映りました。
真っ白なワンピースに負けない白い肌。
血の気の感じられない唇。
漆黒の髪の間から覗く黒目がちの目は大きく見開かれ、わたしをじいっと見つめています。
その時わたしの脳裏に、祖母の言葉が蘇ってきました。
『これは扱い方を間違えると、お化けが出るのよ』
あの言葉は、宝物を守るための嘘ではなかったのでしょう。
「ごめん……なさい……」
必死に絞り出した言葉は、ほとんど音になっていないようでした。
カチカチと鳴るわたしの歯の音の方が、大きく響いているくらいです。
女性はにいっと口角を持ち上げ、恍惚とした声で呟きました。
「みいつけた」
そして彼女はベッドによじ登り、わたしの身体にまたがってきたのです。
折れそうに細い彼女の指が、わたしの首筋に伸びてきます。
嗚呼、このまま締め上げられてしまうんだ……絶望感に包まれ、涙で視界が歪みます。
しかし予想に反し、彼女はわたしの胸に軽く触れ、わたしが身に着けていたものを、するすると脱がせ始めました。
突然のことに戸惑い、必死に脚を閉じようとしますが、まるで糸の切れた人形のように身体が弛緩し、言うことを聞きません。
それどころか反発し合う磁石のように、どんどん脚が開いていってしまうのです。
彼女はくすくす笑いながら、今度は自分のワンピースをたくし上げ、そして――。

雷に打たれたような衝撃に貫かれ、わたしは意識を失っていました。
目を覚ました時には、汗で全身がぐっしょりと濡れていました。
暫しベッドの中で呆然としていましたが、不意に自分が何かを握りしめていることに気づきました。
恐る恐る右手を開くと、そこには一組のはまぐりがありました。
ぴったりと重なり合ったそれは、どんなに力を加えても、決して離れてはくれませんでした。

それからわたしは祖母の形見として、貝合わせの一式を譲り受けました。
今では色んな人を自宅に招き、貝合わせに興じています。
友人、会社の同僚や先輩、大学時代の後輩……みんな最初は戸惑いますが、ぴったりと貝を重ね合わせる喜びを知ってしまえば、その遊戯の虜になります。
時間を忘れて没頭し、とても可愛らしい表情で、もっとしたいとせがむのです。
皆様もぜひ一度、遊んでみてくださいませ。
初めてでしたら出来るだけ優しく、教えて差し上げますので。

 

***

初稿はもっと直接的な描写があったのですが、敢えて削って、導入部分を意味深に書いた方が良いかも…と試行錯誤していたので、そこに言及していただけて嬉しかった…力一さんの読み方が想像以上に官能的で、大変幸せでした…ありがとうございます😭チャット欄の反応にもにっこり☺️今年はアーカイブ残りますように🙏

すけべ怪談2024 32話 推しのライブ後のビジホ(正規版)

これはアイドルオタクの僕が、地方に遠征した時の話です。
そこは僕にとって初めて訪れる地で、特に縁もゆかりもありません。
しかし今回のツアー日程が発表された時、なぜか「ここに行かなければならない」と強く思いました。
結果的に良い番号のチケットが取れたので、僕の勘は冴えていたようです。
あるいはチケット運の神様が、僕をこの地に手招いてくれたのかもしれません。
とはいえ惜しみなく推しにお金を使っているので、通帳の残高は常に虫の息です。
生活費は出来るだけ切り詰めていますが、今回の遠征はどう考えても日帰りは厳しい。
仕方なく僕は、安いビジネスホテルをとることにしました。
「あの辺りは昔花街で、今でもその名残があるから、女の子は泊まらない方がいい」とファンのコミュニティ内でも話題になっていましたが、男の自分には関係ありません。
とはいえ実際現地に着くと、淀んだ空気があちこちに漂っていて、あまり良い気はしませんでした。
勿論そんな気持ちは、ライブ前の高揚感にすぐかき消されてしまったのですが。
 
ライブが終わってホテルに戻り、軽い食事とシャワーを済ませると、僕はすぐにベッドに入りました。
いつもならスマホ片手に推しの可愛さを噛み締めるのですが、その日はなぜかひどく疲れていました。
うとうとまどろんでいると、急に部屋の空気がひんやりと冷たくなりました。
手足が強張り、腹の辺りにずしりとした重みを感じます。
僕にとっては初めての経験でしたが、これが金縛りというものなのでしょう。
冷や汗をかきながら、辛うじて動く瞼を恐る恐る持ち上げてみます。
しかし不用意に目を開けたことを、すぐに僕は後悔しました。
着物を着た色の白い女性が、僕の身体にまたがっていたのです。
目を合わせてはいけない。
咄嗟にそう思いましたが、その時にはもう瞼すら自分の意思で動かせなくなっていました。
生気のない真っ黒な瞳が、僕をじっと見つめています。
彼女はにいっと唇を歪め、僕の上半身をまさぐり始めました。
青白い指先で服をめくられ、氷のように冷たいものが僕の皮膚を撫でてゆきます。
されるがままの僕は、妙に赤い彼女の唇から時折覗く舌を見つめていました。
体温を持たない目の前の女。
しかし艶めかしいその舌だけは、熱を帯びているのかもしれない。
そんなことを考えてしまうのは、彼女の手が僕に快感を与えようとしているように思えてならないからです。
この世のものとは思えない女への恐怖心と、冷たい手の感触で、全身は凍えるほど冷え切っています。
しかし彼女の官能的な手つきによって、僕の下半身にはじんわりと熱が集まり始めていました。
混乱する僕をあざ笑うように、彼女は徐々に顔を近づけてきます。
そして僕の耳に、ふぅっと吐息を吹きかけました。
「あ……」
思いがけない刺激に、僕の肩は小さく跳ね、情けない声がこぼれます。
どうやら既に金縛りは解けているらしく、その気になれば彼女を振り払うことだって出来るはずです。
しかし耳が弱点であることが露呈してしまい、完全に狙いを定められてしまいました。
ぴちゃり。
妖しい水音を立てて、あの魅惑的な舌が僕の耳に這わされます。
ぴちゃり、ぴちゃり。
僕の妄想に反し、その舌は全く熱を持っていませんでした。
ひどく冷たく、しかしたっぷりと湿度を帯びている。
味わったことのない感触のものに容赦なく耳をもてあそばれ、悪寒と快感とが一緒くたに背筋を駆け上がってきます。
おまけに彼女は僕の胸元に指を忍ばせ、丁寧にこねくり回しているのです。
そこまでされてしまえばもう、僕はみっともなく喘ぎ、のたうち回ることしか出来ません。
もうどうにでもなってしまえ――僕が観念したことを悟ったのか、彼女は耳から顔を上げ、唇を寄せてきました。
彼女のふくよかな唇が僕のそれに触れた瞬間……僕ははっきりと思いました。
知っている、と。
その唇の感触を引き金に、僕の頭の中には膨大な映像が流れ込んできたのです。
映像の中には僕と、目の前の彼女の姿がありました。
僕は時代劇の登場人物のような恰好をしていて、彼女は今よりも生き生きとした目をしています。
映像の僕は布団の中で彼女を抱き寄せ、名前を呼んでいました。
つられてその名を復唱すると、彼女はひどく驚いた様子で顔を上げます。
彼女はじっと僕を見つめ、唇を小さく動かしました。
ど、う、し、て。
奇妙なことに、どうやらその映像は、僕の前世の記憶のようでした。
彼女はそこそこ人気のある遊女で、彼女に魅了された僕は、足繁く店に通っていました。
しかし決して裕福ではなかった僕は、次第に借金が膨らんで首が回らなくなり、泣く泣く彼女の元を去ったのでした。
なるほど、僕をこの地に引き寄せたのは、チケット運の神様でも、現在の推しでもない。
前世の僕の推しだったのです。
幽霊になってもなお、彼女は僕が来るのを待っていたのです。
そうか、僕たちは両想いだったんだ!
喜びに打ち震え、僕は何度も彼女の名を呼びました。
しかし僕がその名を呼べば呼ぶほど、彼女は戸惑ったような顔つきになってゆきます。
「どうしたの?僕を待っていてくれたんでしょ?」
痺れを切らしてそう言うと、彼女はばつが悪そうに首を傾げ、そのまますーっと消えてしまいました。
 
それからしばらくして、推しの握手会がありました。
久しぶりに至近距離で見る彼女は、女神のように輝いています。
彼女はとびきりの笑顔を僕に向け、「初めまして!」と言いました。
「あ……前も来たことあるんですけど……」
僕の言葉に、何とも気まずい空気が流れます。
その時の彼女の顔は、ばつが悪そうに消えていったあの幽霊の表情によく似ていました。

すけべ怪談2024 32話 推しのライブ後のビジホ

これはアイドルオタクの僕が、地方に遠征した時の話です。
そこは僕にとって初めて訪れる地で、特に縁もゆかりもありません。
しかし今回のツアー日程が発表された時、なぜか「ここに行かなければならない」と強く思いました。
結果的に良い番号のチケットが取れたので、僕の勘は冴えていたようです。
あるいはチケット運の神様が、僕をこの地に手招いてくれたのかもしれません。
とはいえ惜しみなく推しにお金を使っているので、通帳の残高は常に虫の息です。
生活費は出来るだけ切り詰めていますが、今回の遠征はどう考えても日帰りは厳しい。
仕方なく僕は、安いビジネスホテルをとることにしました。
「あの辺りは昔花街で、今でもその名残があるから、女の子は泊まらない方がいい」とファンのコミュニティ内でも話題になっていましたが、男の自分には関係ありません。
とはいえ実際現地に着くと、淀んだ空気があちこちに漂っていて、あまり良い気はしませんでした。
勿論そんな気持ちは、ライブ前の高揚感にすぐかき消されてしまったのですが。
 
ライブが終わってホテルに戻り、軽い食事とシャワーを済ませると、僕はすぐにベッドに入りました。
いつもならスマホ片手に推しの可愛さを噛み締めるのですが、その日はなぜかひどく疲れていました。
うとうとまどろんでいると、急に部屋の空気がひんやりと冷たくなりました。
手足が強張り、腹の辺りにずしりとした重みを感じます。
僕にとっては初めての経験でしたが、これが金縛りというものなのでしょう。
冷や汗をかきながら、辛うじて動く瞼を恐る恐る持ち上げてみます。
しかし不用意に目を開けたことを、すぐに僕は後悔しました。
着物を着た色の白い女性が、僕の身体にまたがっていたのです。
目を合わせてはいけない。
咄嗟にそう思いましたが、その時にはもう瞼すら自分の意思で動かせなくなっていました。
生気のない真っ黒な瞳が、僕をじっと見つめています。
彼女はにいっと唇を歪め、僕の上半身をまさぐり始めました。
青白い指先で服をめくられ、氷のように冷たいものが僕の皮膚を撫でてゆきます。
されるがままの僕は、妙に赤い彼女の唇から時折覗く舌を見つめていました。
体温を持たない目の前の女。
しかし艶めかしいその舌だけは、熱を帯びているのかもしれない。
そんなことを考えてしまうのは、彼女の手が僕に快感を与えようとしているように思えてならないからです。
この世のものとは思えない女への恐怖心と、冷たい手の感触で、全身は凍えるほど冷え切っています。
しかし彼女の官能的な手つきによって、僕の下半身にはじんわりと熱が集まり始めていました。
混乱する僕をあざ笑うように、彼女は徐々に顔を近づけてきます。
そして僕の耳に、ふぅっと吐息を吹きかけました。
「あ……」
思いがけない刺激に、僕の肩は小さく跳ね、情けない声がこぼれます。
どうやら既に金縛りは解けているらしく、その気になれば彼女を振り払うことだって出来るはずです。
しかし耳が弱点であることが露呈してしまい、完全に狙いを定められてしまいました。
ぴちゃり。
妖しい水音を立てて、あの魅惑的な舌が僕の耳に這わされます。
ぴちゃり、ぴちゃり。
僕の妄想に反し、その舌は全く熱を持っていませんでした。
ひどく冷たく、しかしたっぷりと湿度を帯びている。
味わったことのない感触のものに容赦なく耳をもてあそばれ、悪寒と快感とが一緒くたに背筋を駆け上がってきます。
おまけに彼女は僕の胸元に指を忍ばせ、丁寧にこねくり回しているのです。
そこまでされてしまえばもう、僕はみっともなく喘ぎ、のたうち回ることしか出来ません。
もうどうにでもなってしまえ――僕が観念したことを悟ったのか、彼女は耳から顔を上げ、唇を寄せてきました。
彼女のふくよかな唇が僕のそれに触れた瞬間……僕ははっきりと思いました。
知っている、と。
その唇の感触を引き金に、僕の頭の中には膨大な映像が流れ込んできたのです。
映像の中には僕と、目の前の彼女の姿がありました。
僕は時代劇の登場人物のような恰好をしていて、彼女は今よりも生き生きとした目をしています。
映像の僕は布団の中で彼女を抱き寄せ、名前を呼んでいました。
つられてその名を復唱すると、彼女はひどく驚いた様子で顔を上げます。
彼女はじっと僕を見つめ、唇を小さく動かしました。
ど、う、し、て。
奇妙なことに、どうやらその映像は、僕の前世の記憶のようでした。
彼女はそこそこ人気のある遊女で、彼女に魅了された僕は、足繁く店に通っていました。
しかし決して裕福ではなかった僕は、次第に借金が膨らんで首が回らなくなり、泣く泣く彼女の元を去ったのでした。
なるほど、僕をこの地に引き寄せたのは、チケット運の神様でも、現在の推しでもない。
前世の僕の推しだったのです。
幽霊になってもなお、彼女は僕が来るのを待っていたのです。
そうか、僕たちは両想いだったんだ!
喜びに打ち震え、僕は何度も彼女の名を呼びました。
しかし僕がその名を呼べば呼ぶほど、彼女は戸惑ったような顔つきになってゆきます。
それはまるで、握手会で推しから「初めまして」と言われ、「前も来たことあるんですけど……」と返したときの、何とも気まずい表情に似ていました。
「どうしたの?僕を待っていてくれたんでしょ?」
痺れを切らしてそう言うと、彼女はばつが悪そうに首を傾げ、そのまますーっと消えてしまいました。
どうやら僕は、彼女に呼び寄せられた訳ではなかった。
オタクの執着心により、時を超えて彼女を探し当ててしまった。
その考えに思い至り、僕はとても誇らしい気持ちになりました。
僕ならきっと、来世でも推しに巡り合える。
あの子が幽霊としてさまよっていたとしても、全く別の姿に生まれ変わったとしても。
僕は高揚した気持ちのままスマホを手に取り、推しのSNSを開きました。
『ライブありがとう!みんな大好き!』という文字列と、眩しいあの子の笑顔。
手早くコメントを打ち込んだ僕は、ライブ会場に持ち込むことを断念したバッグを手にし、部屋を出ました。
彼女たちが泊まっているホテルの目星はついています。
来世でも必ず見つけられるのなら、今この手で彼女を自分だけのものにしてしまっても、問題はないでしょう。
『僕も大好きだよ。来世も一緒だよ』

 

すけべ怪談2024 17話 図書館

これはわたしが働く図書館での出来事です。
図書館には何万冊もの本があるため、古くなった本や利用が少ない本などは、バックヤードの書庫に置かれています。
書庫の本が読みたい場合は、申込書を記入し、カードキーを借りて入っていただく形になります。
書庫の中に人が居るかどうかは、常に職員が把握しているので、閉じ込められてしまうことは少なくともわたしが知る限りありません。
それでも閉館前には念のため、書庫の中も巡回することになっています。
書庫のカードキーはわたしが管理しているので、書庫の巡回もわたしの担当です。
その日もいつものように、たくさんの本で埋め尽くされた本棚の間を見回りしていました。
自分以外は誰も居ない、しんと静まり返った空間。
元々図書館は静かな場所ですが、人の気配が全くない書庫は少し異質で、いつも少し早足になってしまいます。
一番奥まで点検が終わり、さぁ出ようと思ったその時です。
ばさっと何かが勢いよく落下する音がしました。
突然の音に驚いて振り向くと、一冊の古い雑誌が落ちています。
綺麗な女の人が表紙のその雑誌は、カメラの専門誌でした。
何もしていないのに、一冊だけ落ちてくるなんて変だな……と思いながら、拾い上げてページをめくりました。
目に飛び込んできたのは、大胆なヌード写真。
表紙を確認すると、確かに「ヌード特集」の文字がありました。
わたしの父もカメラが趣味で、ヌードモデルの撮影会に行ったことがあると話していました。
やましいものではなく、芸術の一種なのでしょう。
わたしはあまり気に留めず、雑誌を棚に戻して書庫を出ました。
 
しかし翌日も閉館前の巡回をしていると、同じカメラ雑誌が一冊落ちてきました。
昨日とは違う表紙だったのですが、開くとやはりヌード特集があります。
薄気味悪さを感じながらも、棚に戻しましたが……その翌日もまた、雑誌は落ちてきました。
予想通り、中にはヌード特集。
この雑誌は毎号ヌードが載っているのか?と思い、前後の号を見てみましたが、そういう訳でもないようです。
三回も続くとなると、流石に偶然とは思えません。
ヌードに執着する「何か」が、自分と一緒に書庫に入ってきているのです。
妨害することで恨みを買いかねないと思い、わたしは雑誌を床に放置してみることにしました。
翌朝、恐る恐る書庫を確認してみると、雑誌はきちんと元の場所に戻されていました。
ちゃんと戻してくれるなら、まぁいいか。
それからも奇妙な現象は続きましたが、わたしは「ごゆっくりー」と声をかけ、放置し続けました。
 
ある日、上司から声をかけられました。
「書庫にある古いカメラ雑誌なんだけど、処分してもいいかな?」
そんなことをしたら、どんな祟りがあるか分かりません。
わたしは食い気味に「あれはいつも熱心に読んでいる方がいらっしゃるんですよ!」と拒みました。
その日の巡回のとき、いつもと違う場所からばさっと雑誌が落ちました。
表紙を確認すると、そこには「特集:魅惑の男色の世界」という文字。
それは腐女子のわたしに対する恩返しだったのかもしれません。
こうして今日もわたしは、職場の平和を守っています。

チョコフォンデュ・ディスコ(ジョー・力一バレンタインボイス2020感想)

バレンタイン2020はビターな話だと聞いて身構えていたので、トラック1・2を聴いて、「あれ?何やら普通に嬉しそうだぞ?買うの間違えた??」と思いました。
その謎は最後まで聴くと解ける訳ですが(毎度ながらこの構成面白い)。
 
ファンへの愛をチョコファウンテンに喩えるって、すごく上手いな~!!
誰かと分け合うことを前提としたチョコファウンテン。
どんな具材を選ぶか、どれだけ食べるかは「あなたたち」次第。
きっと力一さんのチョコファウンテンは、枯れることなく無限に沸き続けるのでしょう。
「飲み干せるものなら、飲み干してごらん?」という挑発も含まれていそうな声色。
独り占めしようとしてしんどくなるより、みんなでチョコファウンテンを楽しんだ方が良いんじゃない?それが「あなた」にとって幸せな状態なのでは?というのが、力一さんなりの答えなのでしょう。
トラック1・2から感じ取れる「嬉しい」という気持ちは、決して嘘ではないんですよね。
「嬉しいけれど困る」のが偽りない本音な訳で。
チョコレート売りのピエロとしてなら、適当な嘘口上をペラペラと言えるけれど、相手が「愛しているファンの一人」であるから、適当にあしらいたくないし、傷つけたくない。
「恋し続ける勇気」を称えて、誠実に向き合ってくれた結果。
ファンを振る形のストーリーなのに、逆説的にファンへの愛情表明になっているのが、ちょっと捩じくれていて面白いですね。
そのため、思っていたより苦味は感じなかった。
まぁ力一さん的にビターなものをお出ししたつもりなのに、こっちが勝手に「ありがとうりきちゃん!わたしも愛してるよ!!」と思ってしまうの、力一さん的には怪異かもしれない……それでも我々ファンはチョコファウンテンの海で泳ぎ続けるのだ。
 
今回の「あなた」について深堀りしようとすると、チョコファウンテンに頭から突っ込んで「もっとちょうだい…?」と笑うやべぇ奴が浮かんでしまうので……考えないことにしましょうね……。
 
でも直接「ファン」に語りかけてる感は、やっぱり夏まつりの方が強いんだよな~と思い、色々考えてみたんですが……トラック3~5が実際の出来事、トラック6だけ力一さんが作り出した夢の世界という解釈もあるような気がしてきました。
上手く断れなかったことを引きずっていた力一さんが、夢の中で彼女に「答え」を伝える……彼女を探し出してもう一度会うより、その方が力一さんっぽいかなぁと……。
 
「あなた」はきっと、後悔していたと思うんですよね。
偶然力一さんの行動圏を知ってしまった。
素顔を知ってしまった。
何度か後をつけてしまった。
これ以上はいけないと思いながら、どうしても抑えきれずに接触して……困らせてしまった。
もう力一さんを好きで居る資格なんかない……と思いながらも、配信があるとやっぱり観てしまう。
配信の中で力一さんは、リスナーからの恋愛相談に応えている。
いつもより真面目なトーンで話す彼の言葉は……「わたし」にも向けられているのだと思うのは、図々しすぎるだろうか。
片想いは自分の中にしかない。
「わたし」が手放したら、消えてなくなってしまう。
だったら……もう少し大事にしていても良いのかな?
「わたし」にとっての幸せは、りきちゃんを追いかけることだから。
そんな彼女が夢の中でチョコファウンテンを振舞ってもらったのだとしたら……ちょっとは報われますよね。
よかった、チョコを飲み干すやべぇ「あなた」は居なかったんだ……。

あたしをサンパチで殴って(ジョー・力一おやすみボイス感想)

のんだくれ介抱ボイスがあまりに良すぎて、「付き合う前の状態がこれなら、付き合ってる設定だとどうなるんだ……!?」と思い、おやすみボイスを購入しました。
ザ・王道……!王道の甘さ……!!
のんだくれ介抱が本編、おやすみがファンディスク。
各トラックごとにスチルがしっかり頭に浮かびます。
何なら表情差分まで浮かぶ。
お酒を飲んだ二人がお付き合いを始めて、おうちデートする関係性になったのかなと思うとニヤニヤしてしまいます。
真っ暗にしても大丈夫か確認している辺り、初めての同衾なんですかね……!
 
聴いていて恥ずかしくなるようなボイスは苦手だと本人もおっしゃっていたので、確かにイチャイチャ成分は薄めているのかもしれない。
普通に映画一本観てしまうとか、一緒に寝るけど腕枕はしないとか。
それでも「ひとんちの枕みたい」という台詞からちゃっかり匂い嗅いでるのが読み取れるし、寝落ちる寸前のじゃれ合う声も甘い空気感たっぷりだし、乙女ゲー脳をしっかり満足させてくれる匙加減がやっぱり上手いです。
ラストの台詞に降参感と色っぽさが滲んでいて、この先に待ち受けるハイパーイチャイチャタイムがいくらでも妄想で補完できてしまう。
 
程よい甘さに仕上がっているのは、基本的に「あなた」にイニシアチブを取らせる形になっているからなんですかね。
力一さんの方からぐいぐい来るのではなく、「あなた」の仰せのままに。
「あなた」の望みに応えてくれる受け身のスタンスだけれど、「俺にも聞いて」と可愛くおねだりしてくる。
夏まつりの時も「俺にも言って」と言っていますし、自分がしてほしいことを相手にもしてくれる人なのかなぁ……と思ったり。
そして彼女の積極性を見ていると、これは酔った勢いで自分から告白してますわ……力一さんの捏造ではなさそうだわ……と思いました。
 
こちらの願いを聞いてくれる力一さんだから、一緒に死体も埋めてくれる訳で……と唐突に話が飛躍してしまうんですが。
「あなた」にイニシアチブを取らせる力一さんの構図は、死体埋めにも適用されているんですよね。
自分は共犯者、「あなた」が首謀者。
天国でも地獄でも一緒に行ってあげるから、「はぐれないで」。
どんなに甘い時間を過ごしても、死体埋めと夏まつりが頭から離れない辺り、やっぱり夏まつりも遅効性の毒ですね……。
甘さを口に含んだまま夏まつりを反芻していたら、はぐれてしまった力一さんの演技も見てみたくなってしまい……失恋ボイス(力一さんが失恋する側)とかあったらいいなと思うんですけど……どうですか……既にあるなら教えてください……。