miracle☆orion

好きなものを好きだと言いたい。

育休から復帰したら、正体不明のピエロと××を埋めに行くことになった話

社会人になってから、わたしは長らく電車での長距離通勤をしていた。
平日の夜はあまり夜更かしをしないので、電車に乗っている間は貴重な趣味の時間。
イヤホンを装着し、TVerでドラマやバラエティを観たり、radikoで好きな俳優さんや芸人さんのラジオを聴いて過ごすことが多かった。

しかし子供が産まれ、生活スタイルが大きく変わった。
育休中はEテレ漬けで過ごし、いざ仕事復帰。
わたしは電車通勤から、車通勤に切り替えることに決めた。
乗り換え時間などのタイムロスを考えると、車の方が色々と都合が良いからだ。
そこで問題となるのが、毎日往復2時間となる車内での過ごし方。
好きな音楽を聴くのは勿論良いが、どうせなら何か新しいものに触れてみたい。
その方が眠気覚ましにもなりそうだ。
早速Twitter(アプリのアップデートを怠っているので、現在もわたしのホーム画面には鳥アイコンが鎮座している)のフォロワーさんたちに、「長距離通勤のお供におすすめのラジオはないか?」と聞いてみた。
主にradikoを使って聴くことを想定していたのだが、返ってきた答えはポッドキャスト番組やWEBラジオなど幅広いものだった。
凝り固まった自分の価値観に気づかされ、人に聞いてみて本当に良かったと思った。

その中で友人の一人が、「もしVTuberが大丈夫だったら」という前置きで、YouTubeの動画へのリンクを貼ってくれていた。
正直そのリプを見たときは、「大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら、あんまり大丈夫じゃないな……」と思った。
決してVTuberへの嫌悪感があった訳ではない。
ただ「全く知らない」だけ。
強いて言えば、大好きな芸人さんがVTuberを題材にしたコント番組をやっていたので、その知識しかない。
後は知人から「娘が急に『志摩スペイン村に行きたい』と言い出したのだけれど、どうして流行っているの?」と聞かれ、調べてみたらVTuberの女の子が出てきて「ふーん」と思った程度。
だからわたしは「ちょっと怖そうだから、勇気が出たら観てみる」と返した。
この時点で、教えてもらった動画の優先順位は最下位だった。
しかし友人は、更にもう一つURLを送ってくれた。
動画のタイトルは「すけべ怪談」。
わたしはとにかくホラーが苦手で、夏になるとテレビCMでもホラー映画が流れることを忌々しく思っていた。
しかしすけべ怪談。
すけべと、怪談。
その取り合わせは、正直とても気になる。
わたしはフォロワー各位から教えてもらった様々なコンテンツをとりあえず横に置いておいて、通勤初日のお供にすけべ怪談を選んだのだった。
https://www.youtube.com/live/hnxff_V_k8Y?si=GJqGyibL-T_0320W

動画は6時間超の長尺だったが、耳だけは空いているわたしには全く問題なかった。
読み上げられる怪談はライトな下ネタから官能小説めいたもの、よく練られたホラー色の濃いものまでバラエティに富んでいて、全く飽きない。
そしてそれを語る男性(当然名前はジョー・カーだと思っていたので、おたよりの中で「りきなんとかさん」と呼び掛けられていることに首を傾げていた)の、しっとりとして艶のある上品な声色が、何とも耳に心地好かった。
何日かに分けてその濃密なすけべ怪談の世界にどっぷりと浸かり、気づけばアフター配信まで聴いていた。
もっとこの人の声が聴きたい……そう思ったわたしは、件の友人が最初に送ってくれていたURLに手を伸ばしたのだった。

https://www.youtube.com/live/AnxhPHyMFjk?si=vxurC0E4kuDqHS08

彼女が送ってくれていたのは、「ラジオ深夜32時」。
すけべ怪談のしっとりとした語り口に浸っていたわたしは、ラジオでの軽妙な語り口にとても驚かされた。
否、すけべ怪談の中でもトーク部分は普通の喋り方だった筈なのだが、わたしの頭に強く残っていたのは、艶っぽい語り部の印象だった。
しかし戸惑う暇もなく、彼のマシンガントークにどんどん引き込まれてゆく。
頭の回転の速さ、豊富な語彙、絶妙な話題のチョイス(黄金ボキャブラ天国にどハマりした世代なので、その手の話題には激しく首を振ってしまう)。
そして一人でこれだけ話し続けているのに、途中で全力の歌を差し挟むことにも驚いてしまった。
しかも楽器の音まで自分でテレレレするスタイル…………何かもう…………好きにならずには居られない。

ここまで来るともう、動画を再生する手が止まらない。
朝も夕も車内では、ひたすら彼のラジオを聴いていた(ハマると網羅したくなる性質なので、1から順番に)。
マスクの下で笑いを噛み殺さなくとも、堂々と笑えるのが車通勤の良いところである。
彼のトークを聴いていると全く眠くならないし、通勤時間が楽しみにさえなった。
このままライトに、ラジオだけ楽しむのも良いだろう。
しかし折角こんなに素敵な人に出会えたのだから、もっと深みにハマってみたい。
そのために必要なあと一撃が何なのか、それは自分でも薄々気づいていた。
歌動画である。
聴いたらきっと引き返せなくなると分かっていたが、敢えてアクセルを踏み込んで突っ込むことにした(散々車通勤の話をしていたのに、この喩えは良くない。ちなみにこれは週末、自宅に居る時の話なので、決して運転中ではない)。
フィーリングで選んだのは歌謡曲リレーだったのだが、予想通りツボだった。

https://www.youtube.com/live/I47bWWyS6Vo?si=jsNfvYkeOz2TEITt

歌が上手くて気持ち良すぎる。
なおわたしの音楽の好みはヴィジュアル系なので、力一さんの好みとは被らないな……と思っていたが、PIERROTの脳内モルヒネを歌っていたので驚いた(何故その選曲……?)

https://youtu.be/T2eL7h85IoU?si=lmKVo3P8Zftew0Ok

Eテレ漬けだった身には、周央サンゴちゃんとのおかいつ縛り歌枠も大変沁みた(サンゴちゃんが志摩スペイン村の子だと気づいたことで、伏線が回収された)。

https://www.youtube.com/live/bI8b-bi61qA?si=w3K859mMh8_cOyoI

そして友人から教わった逆夢があまりにもあまりにも良すぎて、何周したか分からない。
ラジオでの愉快なお兄さんっぷりにすっかり慣れたところで、真剣に歌う姿を見せられると大変心臓に悪い。

https://youtu.be/xAFw99TER0k?si=qb1dx_GVTdvhjLMv

推しと呼べるほどハマったわたしは、「力一さんがいつも傍に居てくれたらいいのに……」と思うようになった。
いつも傍に居て、好き勝手に色々なことを喋って、気分が乗ってきたら歌ってほしい。
しかしそれは彼の配信スタイルそのものではないか。
ということはつまり……その願いは既に叶っているのだ。
VTuberってすごい。

基本的に車内ではラジオ深夜32時を聴いていたが(ラジオの名前が現在は違うことは把握しているが、まだ追いつけていない)、時々友人から教わった別のVTuberの動画を流すこともあった。
その日はサンゴちゃんの雑談を聴いていたのだが、その中で彼女が発売中の「片思いボイス」「ハロウィンボイス」なるものに言及していた。
「そういうのもあるのか……」と脳内ゴローが呟く。
そういえば力一さんも時折、「ボイスの台本を書かないと」と言っていたような気がする。
片思い、ハロウィン。
具体的な単語が頭につくと、それがどういうものなのかすぐ察しがついた。
うたプリで履修しまくったアレだ。
しかしラジオの印象からして、彼が乙女ゲー的な台詞を喋る様をあまり想像出来ない。
一体どんな感じなんだろう……と軽率に検索したわたしは…………知ってしまった。
死体埋めボイスの存在を。
1000円で力一さんが??????一緒に死体を???????埋めてくれる???????????
訳が分からない。
何故そんなニッチなものが存在すると言うのか。
一通りパニックにはなったが、買わないという選択肢はなく、購入手続きを進める。
一体何故こんなことになってしまったのか……一ヶ月前までVTuberのVの字も知らなかったのに……。
そうしてわたしは、引き返せないところまで行ってしまったのでした。

以下は死体埋めボイスのネタバレ感想(というかほぼ妄想)です。

 

 

そもそもわたしが惹かれたのは、すけべ怪談の語り部の力一さんなので、演技する力一さんの声色がたまらなく好きなんですよね。
シリアスな演技がたっぷり楽しめるの最高。
そして直接的な単語を使わずに、死体埋めというシチュエーションを成立させる脚本力もすごい。
トラック1の乾いた声がA面(「あなた」の前で平然を装う姿)で、トラック2の悲痛な声がB面(「あなた」には見せない胸の内)なのかなと思いました。
軽口を叩いて安心させながら、「……多分ね」に滲む不安。
独白パート以外では本心を表に出さないのに、複雑な感情を言葉の端々に滲ませるのがとても上手い。
それにしてもこの「あなた」と力一さんは、一体どういう関係性なのか。
恋人ではなさそうなのに、色々なものを天秤にかけた上で片棒を担ぐことを選んでくれるって、並々ならぬ関係ですよね。
重めの相談を夜遅くまでファミレスでしていた……ということは、学生時代からの腐れ縁?
恋人関係になったことはないけれど、心の底では惹かれ合っているのかな。
お互いずっと好きなのに、付き合っている人は別に居る。
もしかしたら一度くらい、酔った勢いで身体の関係を持ったことはあるかな……ないかな……どうかな……?
あるとしたらその一夜のことも、彼は「忘れないけど掘り返さない」出来事としているのでしょう。
しかも「あなた」が手をかけてしまった相手は、彼女が現在付き合っている恋人なのかもしれない。
力一さんは「あー、あの人ね」と関心が薄いポーズをとりながらも、二人の関係の雲行きの悪さを気にしている。
この時点で力一さんは、彼女から恋愛の相談を受けるのだと思っていたのかもしれない。
そして二人が別れる方向に話を持っていけば、今度こそ恋人関係になれるのかも……という淡い期待を打ち砕かれ、とんでもない運命に巻き込まれてゆく……。
死体を埋めた後、彼女の家に誘われ、少し躊躇いながらも断るところのニュアンスがすごく好きですね……。
シャワーを借りたら、流れで身体を重ねることになるかもしれない。
しかしこんなことになってしまった以上、彼女とはもう普通の恋人同士にはなれない。
「全部捨てちゃいたい」の「全部」には、彼女との関係も含まれているのかな。
力一さんはこの件が終わったら、彼女とはもう会わないつもりだったのかもしれない。
だから最後に、コーヒーをもらった。
好きだったら、彼女に死体を一緒に持たせるか?ちょっと言い方冷たくないか?とも思うけれど、そこは好きだからこそかもしれない。
好きでも恨めしい気持ちはあるし、罪の「重さ」を彼女と分かち合いたかったのかもしれない。最初で最後の共同作業。
その恨みを少しぶつけた後の、「ごめんね」の甘い声がまた良いです。
相手との関係性や彼の心情、そして結末までも聴き手の想像に委ねる余白の作り方と声の演技が上手すぎて……これは劇薬ですわ……。
何てものを聴いてしまったのだろう……。

このボイスの元になった回のりきいちファームも聴きましたが、その時点では死体埋めに対する解像度がだいぶ荒いんですよね。
「俺に任せて!埋めちゃお☆」的なノリから、需要をしっかり汲み取って、追い詰められ要素を盛り込んで、このクオリティに昇華させるの天才すぎる。

https://www.youtube.com/live/6dPVXImNxaw?si=nkSdDzoGOy-LCQtl

そんな訳でわたしは、警察から逃げ切ってお互い日常に戻った後、時々思い出して嘔吐する力一さんが見たいですね。男友達とげらげら笑ってくだらない話して、一人になってからのフラッシュバックからの嘔吐。これです。
こんな話堂々としていいのか?
ワカラナイ…………。

まだまだ沼が深そうなので、ゆるゆると沈みたいと思います。他のボイスも少しずつ買うので、また何か言いたくなったら書きます。