miracle☆orion

好きなものを好きだと言いたい。

音楽劇『キセキ―あの日のソビト―』も素晴らしかったですという話

大好きな映画『キセキ―あの日のソビト―』が舞台化されるということで、配信チケットを購入して鑑賞しました。
劇場に足を運ぶのは難しい状況だったので、配信してくれたら嬉しいなぁ……でもこのご時世とはいえ、全ての作品が配信出来る訳じゃないよなぁ……とソワソワしていたので、配信決定のニュースが本当に嬉しかったです。
これから大阪公演(嬉しいことにこちらも配信があるので、また観たいと思います!)もあるので、それまでに感想を書いておこうと思い、久しぶりにブログを開きました。
 
一言で言うなら、音楽劇『キセキ―あの日のソビト―』もめちゃくちゃ良かった!です!!
映画版は言葉での直接的な描写が少なく、人物の心情を表情や情景から想像するタイプの作品です。
それとは対照的に、舞台版は台詞・モノローグ・歌でストレートに心情を述べていました。
「音楽劇」なのでミュージカルとは違うのですが、大事な場面で歌が効果的に使われていました。
生バンドの演奏も素晴らしいし、皆さん歌が上手いのでアカペラもすごい!
生で観たら更に楽しいんだろうなぁ……!!
 
また、1つのシーンの中で時間軸の異なる複数の出来事を次々に表現するなど、舞台ならではの表現を使うことで、各メンバーのバッググランドを描いています。
映画版では兄弟に焦点が当てられていましたが、舞台版はメンバー全員がそれぞれ悩みながら、5人で前に進んでゆく物語になっていました。
小説『それってキセキ』の内容も反映されていたのが、GReeeeNファンとしてはとても嬉しかったです!
映画版は役名が片仮名表記ですが、舞台版は英語表記になっているのも、本家GReeeeNにより近いことを表しているのかな……と思いました。
 
以下、ネタバレ感想になります。
大阪公演の配信*1は11/12~11/18まで視聴出来るそうなので、まだの方は是非とも作品をご覧になってからお読みください!
 
 
公演開始前に公式Twitterでセットリストが公開された時、HIDEとJINのデュエットらしきオリジナル曲があることに興奮しました。
また、キャストへのインタビューでJINの「俺がGReeeeNのファン第一号だよ」という台詞があると知り、一体どのシーンで言うんだろう……!と、とても楽しみにしていました。
 
映画版はハイスピードのライブシーンから始まることで、音楽に妥協しない姿勢を印象付けています。
舞台版もやはり音楽からですが、こちらはHIDEとJINのデュエット……!
美しく響くハーモニーを聴き、一気に音楽劇キセキの世界に引き込まれました。
そして兄弟の過去を経て、ハイスピードのライブシーン。
映画版はジンが歌う前にフードをとるのが印象的ですが、舞台版はフードを被って歌い始めます。こういった小さな違いを探すのも楽しいです(売野さんの「お父さん、ヤクザか何か?」の台詞が「武士」になっていたり、naviと92の台詞が入れ替わっていたり)。
ライブハウスの店長のキャラの濃さがなかなか衝撃的で笑、JINを叱る厳格なお父さんとの対比が面白かったです。
売野さんと店長との絡みも好き。
問題を起こしたのはJINなのに、誠心誠意謝ってくれるトシオがめちゃくちゃ良い奴で微笑ましい(だからこそ、二人の道が分かれていってしまうのが切ない訳ですが……)。
 
オープニング曲のHIGH G.K LOWが、とても良い選曲!
キレッキレに踊るグリーンボーイズの姿が見られて、とても楽しくてハッピーな気持ちになれます。
メンバーの設定が小説(≒本家GReeeeN)寄りになったことで、いじられキャラがソウからnaviに、バスケが得意なのもソウから92に変更されていました。
naviの親友まで出てきたことにびっくり!
バスケのシーンで「浪人してると身体なまるよね。その点92はずるいな~」という台詞があり、92だけ年下であることをさらっと表現しているのが上手いなぁと思いました。
 
小説だけでなく、映画キセキのノベライズ版の要素も少し入っていましたね。
お母さんの身体が弱い設定とか、失われた歯のエナメル質が元には戻らないことを人間関係になぞらえているところとか。
 
HIDEは映画版より明るさ・無邪気さがアップしている印象でした。
予備校時代でも、模試の出来が悪くても、とにかく明るい。
高校時代、自分のバンドに「ヒデバン」と付けていたというエピソードから、我の強さが垣間見えて良いです笑
 
HIDEがカラオケでYOASOBIの「夜に駆ける」を歌っていることにびっくりしたのですが、この選曲はすごく上手いなと思いました。
理由としては、以下の三点が挙げられます。
・時代設定が令和であることを示している(映画版は2000年代)。
・HIDEの高音、歌の上手さを表現している。
・カラオケに来るのは久しぶりだと言っているので、この曲を歌うのは恐らく初めて。難易度が高い曲をさらっと歌いこなしてしまうHIDEの天才肌っぷりが分かる。
時代設定が令和になったことで、MDをパタパタさせるあの名シーンが無いのですが、舞台上ではMDという小さいアイテムはあまり映えないだろうし、スマホに強引に音源を送るという行動も、HIDEの弟らしさを表していて良かったと思います。
 
そしてJINが映画版よりも饒舌になったことで、兄弟の会話が増えているのが微笑ましいです。
お父さんに殴られたJINにHIDEが絆創膏を渡そうとしたり、JINに煙草を吸わされそうになったHIDEが「無理。ギリ未成年」と断ったり、JINが家出する前に「坂本龍馬も言ってんぞ。家を出れば、斬られるリスクは避けられるぜよ」という何とも愉快な発言をしたり、JINの「JKS……ジンクローゼットスタジオだ!」という天然発言に、「兄ちゃん、クローゼットはCだよ!」とHIDEがツッコミを入れたり……本家兄弟の軽妙なボケツッコミトークが連想されました。
「息子に刀向けるなんて、外科医のすることかな?」「斬っても縫合出来んじゃね」「じゃあ外科医のすることか」というやりとりも好きですね。
HIDEは呑気に感心していますが、JINは後にこの理論で、歯科大生のグリーンボーイズの歯をへし折ろうとしているので……笑
 
楽しいやりとりばかりではなく、言葉でのぶつかり合いがしっかり描かれているのも舞台版の魅力です。
歯医者という目標をJINから妥協と決めつけられてショックを受けるHIDEの姿から、歯医者も彼にとって大事な夢であることが伝わってきました。
歯医者という目標を見つけるまでのお母さんとのやりとりが丁寧に描かれているので、HIDEの気持ちに共感出来るし、歯医者の夢も応援したくなるんですよね……。
両親のキャラクターは映画の印象そのままでしたが(お母さんがとても可愛い!!)、医者として苦悩しながら患者の命と真剣に向き合うお父さんの姿が、より明確に描かれていました。
 
印象的だったのは、JINがグリーンボーイズの音源を聴くシーンです。
映画版では新たな希望を見出したJINの瞳に光が宿るシーンでしたが、舞台版ではJINの悔しさ・絶望が強調されていました。
それによって、クライマックスでJINが本音を吐露するシーンに説得力が出ています。
 
naviはチャーミングないじられキャラっぷりが輝いていて、本家naviさんのイメージに近いなぁと感じました。
自分のあだ名について解説するシーンで、名前の漢字を説明するのが面倒だからと言いつつ、結局更に説明が面倒なことになっているのに本人が気付いていなそうな辺り、彼の天然っぷりを象徴していて可愛いです。
JINから「眼鏡かちわんぞ!」と怒られているところ、笑いました……笑
映画版ではヒデの呼び方が森田くん→森田→ヒデと徐々に変化していましたが、舞台版では最初から「HIDEくん」ですね。
 
92はとにかくイケメンすぎて、目を奪われました。
足を開いた姿勢でお辞儀するところが……好き……。
軽いノリで何でもこなしてしまう彼が、JINに対して反抗を見せたのは、初めて自分の将来について真剣に考えた証なんだろうなぁと思いました。
 
SOHは映画版と一番違う印象ですが、実直で素朴な性格が魅力的で、存在感がありました。
音楽にどんどん夢中になっていく様子がとても良かったです。
初ライブで緊張しているシーン、すごく好き!
 
naviがCDデビューを躊躇い、SOHが音楽をやりたいと願い、92がJINに反抗する。
映画版でヒデが背負っていた役割が他のメンバーに割り振られ、HIDEはJINに本音を話すよう促すという新たな役割を担うことで、5人の青春ストーリーとして再構築されたキセキ。
「俺たちの知らない兄ちゃんの話、聞かせてよ」「兄ちゃんの想いとか分かんなかったら、ただ言い合って終わるだけじゃん。そんなの一番最悪だろ」そう言ってJINの肩を掴むHIDE。
ずっと孤独だったJINの背中がHIDEの手によって振り向いたことに、胸が熱くなりました。
「俺がGReeeeNのファン第一号だよ」という台詞が、こんなに重みのあるものだとは……。
JINが複雑な胸の内を吐き出すことで、GReeeeNの夢を繋ぎ止め、5人でキセキという名曲を生み出し、ゆいちゃんに勇気を与え、「メスを持たせてもらえなければ、外科医には何も出来ることがない」と嘆いていたお父さんにメスを持たせることが出来た。
JINは紛れもなく、心の医者になることが出来たんですね……。
「俺は絶対お前らの力になる!音楽プロデューサーとして、お前らの音楽を届ける!」という、JINの心からの叫びがとても良かった。
映画のジンは寡黙だったけれど、同じ激情を秘めていたのでしょうね……。
 
売野さんも好きなキャラクターなので、出番が増えていて嬉しいです。
売野さんの台詞を受け売りするJINや、GReeeeNの躍進っぷりに興奮する売野さんが見れて良かったです。
「人の曲を売り込むって、最早こっち側の人間だよ?」という台詞が好きです!
売野さんが(現実と同じく)ドラマタイアップの話を持ってきたことで、彼らだけの問題ではない状況に追い込まれるのが良かったですね。
キセキを作る上で、JINが「お前が育てたもの、仲間と一緒に得たもの、全部俺に渡せ。形にすっから」と言ってくれるのが最高です。
音楽ビジネスのプロである売野さんのやり方は勿論間違っていないけれど、JINはJINのやり方でGReeeeNの音楽を世に送り出そうとしているんだなぁ……。
 
今までソビトの歌詞が自分の中で上手く解釈出来ていなかったのですが、音楽劇キセキのエンディングとして聴くと、GReeeeNの音楽を世界中に届けたいと願うJINの曲なのかなぁと思いました。
僕=ジン
あなた=GReeeeN
君=ファン
と考えると、「あなた」に対して「ひねりつぶすから」というバイオレンスな言葉を使っているのも理解出来るんですよね(メンバーから「熊みたいじゃない!?」ってヒソヒソされているシーンを思い出しました)笑
ゆいちゃんの手紙を読むシーンから、お互い顔を知らないゆいちゃんとGReeeeNが通じ合っている温もりが感じられて、これが音楽を通して抱き合うということなんだろうなぁと感じました。
GReeeeNへの手紙がたくさん届いている=世界中にゆいちゃんのような人がいる=「世界中で君と出会って抱き合って」。
一人の女の子を救うだけではなく、たくさんのキセキがあちこちで起こっているんですよね。
ゆいちゃんのハッピーな気持ちが伝わってきて、見ているこちらも幸せになれます!
ゆいちゃん可愛い!!
 
エンディングでメンバーが白衣を羽織る身のこなしが鮮やかで、歯科大生から歌手兼歯医者という唯一無二の存在への華麗なる変身シーンだなぁと思いました。
JINと肩を組んで歌っているのも素敵。
 
新たなアプローチでキセキの物語が味わえて幸せだったので、テレビドラマ版や漫画版やアニメ版も見たいな……などと欲張りたくなってしまいました。
大阪公演の配信や円盤も楽しみです!
 
そして今回の舞台で初めてキセキの世界に触れた方は、是非とも映画版も観ていただきたいです。
兄弟の絆が琴線に触れた方には映画『キセキ―あの日のソビト―』*2*3グリーンボーイズに惹かれた方には小説『それってキセキ』、GReeeeNの音楽をもっと聴きたくなった方にはベストアルバム『ALL SINGLeeeeS~& New Beginning~』をオススメしたい……ですが、全部大好きなのでとことんキセキワールドを味わってほしい!!!!
これからもキセキの世界が広がってゆくことを願います。

*1:https://kisekistage.com

*2:ネタバレなし感想→

*3:ネタバレあり感想→